ロープアクセス技術
橋梁点検に用いるロープアクセス技術とは、洞窟探検に使われ発展していたSRT技術(シングルロープテクニック)を産業用に改良したもので、ロープを伝って登高・下降やトラバース(横移動)などを安全、且つ容易・迅速・確実に行う技術です。
橋梁点検で義務付けられている近接目視には、橋梁点検車や高所作業車を使用しますが、それらが使用出来ない橋梁形式や現場条件の箇所に、弊社ではロープアクセス技術を用いて点検を行います。
近接目視とは ~ 触診や打音検査が出来る距離まで近づき、損傷状態や変状を調査する事です。
ロープアクセス技術はNETISに登録されています。
〈〈 NETIS KK-140003-A 〉〉
NETIS(新技術情報提供システム)とは、国土交通省が新技術の活用と新技術に関わる情報の共有および、提供を目的に整備したイントラネット及びインターネットで運用されるデータベースシステムです。
ロープアクセス調査の必要性
橋梁点検は、一般的に橋梁点検車を用いて行いますが、下記の橋梁は橋梁点検車が使用出来ません。
そのような場合に「ロープアクセス」による橋梁点検を行います。
・人道橋の吊橋は橋梁点検車が乗り入れられません。
・高さが30m以上の橋脚は、橋梁点検車のアームが上部から届きません。
・橋梁下が河川等で高所作業車が乗り入れられない箇所の橋脚。
・道路が急勾配の橋は、橋梁点検車が設置出来ません。
・橋面の歩道に橋梁点検車が乗り入れられない。
・交通量が多く、橋面を通行規制したくない。
ロープアクセス調査手順
ロープアクセスによる橋梁点検は、以下の手順で行っています。
1.事前調査
①橋梁形式(吊橋or斜張橋or桁橋)
②橋梁規模(橋長・径間数)
③使用材料(コンクリートor鋼材)
④架設年次(完成後何年経過しているか)
⑤補修履歴(補修工事は行っているか)
2.現地踏査
①橋梁形式の確認
②道路状況の確認(交通量・歩行者の有無)
③桁下状況(マトリスによる撮影)
3.調査計画策定
①マトリスで撮影した映像解析(損傷が多い部材はどこか?)
②点検手順(損傷が多い部材を優先)
③点検手法(損傷位置までどのようにアクセスするか。スライダーやフックの選定)
4.ロープアクセス調査
①調査計画で立案した調査方法で調査
②その方法で問題がないか確認
③本橋梁の調査方法の確定
5.調査成果品提出
①近接目視損傷写真・損傷位置図
②ドローンで撮影した橋梁全体画像、損傷画像
現地踏査時にマトリスで撮影する事により、ロープアクセスの効率化を図り一日でも短い調査になるよう努めています。
ドローンで撮影した画像も成果として提出可能です。
橋梁形式について
1.吊 橋
吊橋の両端にある大きなコンクリート(アンカレイジ)に主索ケーブルを定着させ主索ケーブルからハンガー(吊索)を吊り下げ、車両や人が通る床を吊った橋梁です。
現在世界一長い吊橋は明石海峡大橋で中央支間は1,991mもあるそうです。
出典:橋梁定期点検要領(国土交通省)
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2.斜張橋
斜張橋も吊橋と同じく、ケーブルの張力を利用した吊構造の橋梁でありますが大きく異なっている部分は、斜張橋は塔と桁をケーブルで直結していることです。
また、主に桁に作用する圧縮力とケーブルに作用する引張力を塔の左右で釣り合わせるため、アンカレイジが要らないのも相違点の1つです。
現在世界一長い斜張橋は、ロシアのルースキー島連絡橋で支間長が1,104m国内最長の斜張橋は、広島県尾道市の生口島と愛媛県今治市の大三島を繋ぐ多々羅大橋で、橋長1,480m、中央支間長が890mです。
多々羅大橋はフランスのノルマンディー橋と姉妹橋縁組をしているそうです。
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3.桁橋
箱桁橋は、鋼板を箱型断面に溶接して組み、これを主桁とする橋梁の事です。
曲げ耐性、ねじり耐性も大きく曲線橋に適しています。
出典:橋梁定期点検要領(国土交通省)
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4.鈑桁橋
鈑桁橋は、鋼板をI型断面にして組み、これを主桁とする橋梁です。
単純かつ鋼重も小さく、経済的な形式の橋梁になります。
桁橋では支間をあまり長く出来ないので、長い桁橋では橋脚を多く立て繋いでいきます。
桁の支持方法により、単純桁橋、連続桁橋、ゲルバー桁橋に分類されます。
世界最長の橋梁は、中国にある丹陽-昆山特大橋で、全長が164.8kmもあります。
出典:橋梁定期点検要領(国土交通省)
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4.アーチ橋
アーチ橋は、上向きに曲がった弓形状の梁であるアーチリブで荷重を支える橋梁であり、アーチリブには主に軸方向の圧縮力が作用します。
アーチ橋は構造によっていくつかの形式に分類されますが、代表的なものとしてローゼ橋とランガー橋、タイド橋などがあります。
現在、世界一長いアーチ橋は中国にある盧浦大橋でアーチ支間が550m、日本一のアーチ橋は広島県にある広島空港大橋でアーチ支間380mあります。
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ダムの調査状況
高さのある橋台や支柱
このような橋梁ですと、床版下面等は橋梁点検車で点検した方が効率がいいので、床版下面等と橋梁点検車の届く範囲の部分は橋梁点検車で行い、届かない部分の橋台や橋脚・支柱はロープアクセスで調査を行う、という合わせ技も出来ます。